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まちの御用聞き

山田酒店五代目

山田 和弘

144年続く実家の酒屋を潰していいのかと、

悩んだ末に養父に帰ってきたのが3年前。

35歳の時。

地元住まいは高校生ぶり。

帰って来た当初は、正直、田舎より都会のほうが便利だし、渋々な気持ちもあった。

近所でも個人商店が減っている時代に、

どうやっていくんだ……と。

だけど今は、少しずつ仕事が楽しくなってきた。

地域の人に喜んでもらえる酒屋になろうと日々奮闘中です。

電話一本でお届けします。

今日はおじいちゃんの代からのお客さん、田中さんに配達の日。

「お酒は重いし、車の運転も最近は控えめ。配達してくれて助かってるわ」

コンビニやスーパーで買うより少し割高になるけれど、

昔からの顔馴染み、気楽さ、いつでも駆け付けてくれる信頼関係で、

山田酒店を贔屓にしてくれる方は田中さん以外にも結構いる。

お年寄りが多い土地柄もあって、数年前からは、

週1で日用品や食料品の配達も始めた。

口コミで広がり、山田君に頼って注文してくれるお客さんも出来始めたという。

養父のいい循環を小さな店から

山田君が地元に帰って来てまず感じたのは

「お酒に食べ物に、養父って結構ええもんあるやん!」ということ。

それを地元の人が知らないのはもったいない。

そんな想いから、お店の棚をリニューアル。「地産地消」をテーマに、

養父のお米でつくった日本酒や、朝倉山椒などの特産品…、

お酒から食材までここでしか買えないものも用意した。

「地元産の美味しいものを地域の人が食べる。

地元で喜ばれたら生産者さんも嬉しい。

地域への恩返しになる。いい循環を作りたい」と山田君は話す。

隙間に潜む小宇宙

山田酒店の店内には、歴代店主が集めた非売品のグッズや趣味で作った小物たちが

陳列棚の隙間にそれとなく飾られている。

それらは、お店と共に歴史を作ってきた。

今や、どの地域でも数を減らしている個人商店だが、

人やモノとの出会いを大切にしてきた店主たちの気配を楽しめるのが醍醐味。

この場所を繋ぐと決めた山田君。

お店にはまた新しい空気が吹き込み始めた。

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