Copyright ©︎長靴ノート 2018. All Rights Reserved .

REPORT

  •  

FILE

13

鹿肉伝道師

宝塚ジビエ工房

宇仁菅 諭

 大屋町に歌がウマくてイケてる猟師がいる」

という噂をいろんな所で聞いていた。今回、お初にお目にかかるこの人こそ、噂の猟師、宝塚市出身の宇仁菅諭さん(49歳)。猟師歴25年。

 小さい頃から虫、魚、両性爬虫類など、なんでも捕まえるのが好きだった。だから、銃の免許を持てば野生鳥獣を捕獲できると知り、挑戦心に火が点いた。早速、免許を取り、いろんな猟師に弟子入りしては仕事の合間で山に入っていた。ところがついに2年前、養父市に移住し猟師が本業になったそうだ。

 せっかく捕まえるなら食べたい。引っ越して来てすぐに、自宅の古民家の脇に鹿専用の処理場も建ててしまった。精肉作業は独学で勉強。今では、猟に出て、鹿を仕留め、精肉の加工販売をする毎日。ひと月で約20頭もの鹿を処理しているという。

鹿肉は血抜きで抜群に美味くなる

「殺めた命はまるごと頂く」が宇仁菅さんのポリシーだ。

鹿は全体重の2割しか肉が取れないそうだが、その中でも一番商品価値の高い背ロースと後ろ脚の肉を始め、前肢やスネ、タン、脳みそや心臓まで食用として販売する。

「鹿肉って『臭い、硬い、まずい』イメージが強いやろ。でも、上手く血を抜けば抜群に美味いんやで」と宇仁菅さん。取材日、宇仁菅さん特製の豪華鹿肉料理を頂いたのだが、

臭みもなくて、柔らかく、いくらでも食べられるほどに美味しかった。その他、バラ肉はドックフードに。レバーはスッポン釣りのエサにしたり、角付きの頭蓋骨は芸術家に売ったりしている。

宇仁菅さんお手製のローストベニソン!!激ウマ!!

バラ肉を使ったドッグフード「鹿肉ジャーキー」

安全な鹿肉を届けるためアプリを開発

ところで、最近、宇仁菅さんが奮闘しているのは、消費者により安全な鹿肉を届ける仕組みを作ること。「やるんだったら、世界の食品衛生基準のHACCPと同じレベルを目指したいと思った」と宇仁菅さん。そこで、開発したのがスマホ用のアプリ。「いつ」「どこで」「誰が」「どのように」獲った鹿かなどを、現場で逐一スマホに記録して管理しようというもの。

さらには、鹿がワナにかかったらスマホに連絡が入る仕組みも製作中。アプリと連動させてトレーサビリティを完璧なものにしようとしている。「猟師仲間から生きた鹿を買い取ることもある。状態がいいものを買いたいし、お客さんにも提供したい。美味しい鹿肉を

みんなに食べてほしい」と宇仁菅さんは話してくれた。

宇仁菅さんと行くナイトサファリ!!

   猟師って夜の山でも鹿を撃つの?夜、鉄砲打ったりしたら危なくない?

「いやいや、猟は夜にはしないよ。逆にクマに食べられちゃうからね。今日は調査や。最近、俺は銃じゃなくてワナで鹿を獲っている。どこに鹿がいるか、どこにワナを設置したらええかを探るために夜の山を車で走ってチェックするんや」と、宇仁菅さん。

   9月のある日の夜、宇仁菅さんの山道調査(私たちにとっては動物園のナイトサファリ気分)に長靴ノート編集部も同行させてもらった。

    なんとなく想像は付いていたけれど、山の中は鹿だらけだった。これからの交尾時期に向けて単独行動で縄張り作りに励む大きな牡鹿に出会ったり、山奥にある牛の放牧場を駆け回る牝鹿と子の群れを見たり。これだけ鹿がいたら、いくら獲っても山は鹿パラダイス。宇仁菅さんの仕事がなくなることはないだろうな……。

山道を車で走りながら、宇仁菅さんがワナを設置するポイントをチェック。草が倒れて、ちょっとした鹿の道ができている場所の道路沿いが、特に狙い目らしい。鹿は臆病だから、みんながいつも通る道が決まっているそうで、こういう場所にワナを設置すれば、翌日には鹿がかかっているという。

    私たちが見かけた鹿たちも、近い将来、宇仁菅さんの手で肉になるのかな。養父では鹿による田畑の食い荒らし被害が多発中。厄介者があんなに美味しい肉に変身するなんて凄いと思う。宇仁菅さんの技術は、みんなが喜ぶ貴重なモノだろうと感じた

INFO

宝塚ジビエ工房

www.jibier888.com

12

<<

 

>>

14

REPORT